鍼灸師の私が「介護職員初任者研修」を取得した理由|なぜ在宅ケアでは「社会的側面」の視点が不可欠なのか

目次

ただ痛みを診るだけの訪問鍼灸でいいのか?

当院では、千葉県船橋市を中心に、ご自宅や施設で療養されているご高齢の方々へ向けて、訪問鍼灸やリハビリ(機能訓練)、足浴・手浴などの在宅ケアを提供しています。

私は医療国家資格である「はり師・きゅう師」として施術に携わってきましたが、訪問鍼灸院を開院するにあたり、改めて「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」の資格を取得しました。

「なぜ鍼灸師がわざわざ介護の資格を取るの?」と聞かれることもあります。

その理由はシンプルです。ご自宅で療養される患者様と向き合うなかで、「お身体の局所的な痛みだけを診ていては、その方の『本当の在宅生活』を支えることはできない」と痛感したからです。

今回は、私が介護の学びを通して再確認した「アセスメントの大切さ」、そして訪問鍼灸師として何より大切にしている【社会的側面(生活環境・家族・ケアチームとのつながり)】へのアプローチについて詳しくお話しします。

患者様を取り巻く「3つの側面」とアセスメント

医療や介護の現場では、患者様一人ひとりの状態を正しく理解するために「アセスメント(事前評価・分析)」を行います。その際、人間を以下の3つの側面から総合的に捉えることが重要とされています。

身体的側面

疾患、痛み、関節の動き、筋力、むくみ、麻痺など

心理的側面

不安、諦め、モチベーション、認知機能の状態など

社会的側面

住環境、家族関係・介護負担、ケアプラン、社会参加・孤立状態など

鍼灸師をはじめとする医療従事者は、どうしても「身体的側面」に意識が向きがちです。もちろん痛みを和らげたり可動域を広げたりすることは専門職として当然の務めです。

また、「心理的側面」として患者様の気持ちに寄り添うことも欠かせません。

しかし、在宅ケアの現場において、患者様のQOL(生活の質)を決定づけ、ご家族やケアマネジャー様が一番頭を悩ませているのは、実は「社会的側面」なのです。

なぜ鍼灸師が「社会的側面」を徹底的に大事にするべきなのか?

介護職員初任者研修の講義や実技を通じて、私は「介護という営みは、その人の人生や生活環境そのものを支える仕事である」ということを深く学びました。

在宅で暮らす患者様は、病院のベッドの上にいるわけではありません。それぞれに「長年暮らしてきた家」があり、「支えるご家族」がおり、「ケアマネジャー様が立てたケアプラン」の中で生活されています。

社会的側面を重視する鍼灸師であるために、当院では特に以下の3つの視点を徹底しています。

① ご家族の「介護負担」と「見守りの不安」に寄り添う

在宅ケアは、患者様ご本人の苦しみだけでなく、それを陰で支えるご家族の疲弊や不安と隣り合わせです。

「自分が仕事で立ち会えない間、どんな施術をされているのだろう」「最近、表情が暗いけれど大丈夫だろうか」――そんなご家族の声をたくさん耳にしてきました。

だからこそ当院では、無料の「見守りサポート」を行っています。施術終了後、その日の表情や体調の変化、施術中のご様子を、離れて暮らすご家族やご不在のご家族へLINEやメールでお知らせしています。単に体に鍼を打つだけでなく、ご家族の精神的な負担を軽くすることも、訪問鍼灸師の大切な役割だと考えています。

② 居住環境(生活動線)に合わせた機能訓練

いくら施術室で関節が動くようになっても、実際の自宅の段差が越えられなければ意味がありません。

当院では、お部屋のレイアウト、ベッドから車椅子への移乗動線、トイレまでの手すりの位置などをしっかりと確認(アセスメント)した上で、機能訓練や施術を行います。

「介護の視点」を持つことで、無理な動作を強いることなく、住環境に即した安全な日常動作(ADL)の維持・改善を目指すことができます。

③ ケアマネジャー様・他職種との「スムーズな連携」

訪問鍼灸は、決して単独で行うものではありません。医師、ケアマネジャー様、訪問看護師様、デイサービススタッフ様など、チーム全体で患者様を支えています。

当院では、ケアマネジャー様が大切にされているケアプランの意図を理解し、日々の施術記録や月次の経過報告書を迅速・丁寧にお届けすることを徹底しています。介護現場の共通言語や苦労が分かっているからこそ、他職種との情報共有がスムーズに行え、「任せて安心」と言っていただける信頼関係を築くことができます。

まとめ:医療と介護をつなぐ「社会的視点を持った鍼灸師」として

「痛みを取る」のはプロの鍼灸師として当然のことです。

しかし私たちが目指しているのは、その先にある「患者様が住み慣れた自宅で、ご家族とともに安心して笑顔で暮らし続けられること」です。

 身体の痛みを和らげる(身体的側面)

 心の不安をほぐす(心理的側面)

 ご家族・住環境・ケアチームとのつながりを大切に支える(社会的側面)

「介護職員初任者研修」で得たこの確固たる視点こそが、いとう訪問鍼灸院の最大の強みであり、患者様やご家族、ケアマネジャー様に対するお約束です。

船橋市および近隣エリアで、在宅でのリハビリや痛み・しびれのケア、介護に関するお困りごとがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。丁寧なアセスメントと温かいケアで、皆様の在宅生活を全力でサポートいたします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次